夢の話

彼は寂しいと思っている。
なぜ自分のそばにだれもいてくれないのか、と。
毎晩広い部屋で一人で過ごし、高い天井を眺め、時に過去のぬくもりの感触を思い出そうとする。
自分はつくづく孤独なのだ、と思う。
まるで孤島に取り残された、モンスターになった気分になり、自分をどこまでも哀れんでみたりする。
彼は寂しいまま老年になっていた。

問題は、いつのまにか彼が自分だけを哀れんでいる点であって、
原因が己以外のところにあると感じている点だ。

簡単なことだったのだ、少しだけ勇気を持って他人に心を開けばよかったのだ。
彼は遠い雨の夜に涙を流す。さめざめと銀色の、無邪気で、蒙昧な涙を。
その涙は誰のためなのだろうか。

特別美しいものを見たとき、彼は孤独を感じ、恐ろしさから叫びだしそうになる。
この悲しみはだれにもわからないだろう、と思う。
彼は知らないだけなのだ。己と同じくらいの他人の孤独と、脆さを。

彼は寂しいと思っている。実際に寂しい人間で終わろうとしている。
あのとき、あの晩に、ただ一言勇気をだして言えたらよかったのに。

彼は自分を孤独だと思っている。そして実際孤独に終わろうとしている。
今、立ち上がって、電話をとり、一言だけでいい、言えたのならよかったのに。
彼は・・・・・

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by swansong_day | 2010-04-13 01:10


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